わたしが韓国に異常な興味を持つきっかけとなった
ボクシングの世界チャンピオンである。
はじめて彼を観たのは大橋秀行との第2戦である。
1、2Rはほぼ互角、あるいは大橋のほうが打ち勝って
いたかもしれない。しかし3R、チャンのラッシング
・パワーに火がつく。大橋は3度のダウンを奪われ
絶体絶命。そこで大橋の起死回生の右ストレートが
チャンのアゴを直撃する。大きくグラつくチャンピオン。
大橋はラッシュを仕掛けようとするが、チャンは
なりふりかまわずクリンチにいき、なんとかこのラウンドを
切り抜ける。
ダメージはチャンのほうが大きく、その後しばらくは
大橋優勢に試合は進むが、チャンのダメージからの
回復とともに形勢は逆転、7Rには大橋から2度のダウン
を奪う。
8R、手負いの獣となった大橋は猛反撃に転ずるが
チャンの驚異的なタフネスの前に反撃を食らい、この
ラウンドついにTKO負け。激闘に終止符が打たれた。
チャンはその後マネージャーとのトラブル、家庭内の
ゴタゴタでタイトルを返上してしまう。そんなさなか
ストロー級でタイトルに挑戦が決まった大橋にチャンは
手紙を送っている。
「君との2試合を通じて、君が世界チャンピオンに
相応しい男だとわかった。僕が君のパンチで倒れそうに
なったとき、必死でクリンチしたように、君もすべてを
かなぐり捨てて戦ってほしい。僕は韓国人だが、
君を応援する。」
そして大橋はチャンの同国人、チェ・ジョムファン
(崔漸煥)を9RKOで破り、念願の世界タイトルを
獲得する。一方、チャンはタイトル返上後王者に
着いて非常に評価の高かったウンベルト・ゴンザレスに
挑戦するも判定負け。その後クラスを上げ、フライ級
で2度挑戦するが、最後はタイのムアンチャイ・キティカセムに
3度のダウンを奪いながらも生涯初のKO負けを喫し
引退した。
一見ラフなだけのコリアン・ファイターにも見えるが、
実際に手を合わせた選手(渡嘉敷、大橋など)は口々に
「チャンは凄い。」と言う。チャンの防衛戦のなかでは
屈指の名勝負となった渡嘉敷戦のあと、チャンは
「レフリーが試合を止めなければ、おれは試合を投げていた。」と
言っている。大橋への手紙の件とあわせて、チャンの
人間的な大きさをわたしは感じた。そして、つねに前に
出るボクシングスタイル。ただそれだけではなくサウスポーに
スイッチしたり、テクニックにも裏打ちされている。
ひょっとしたら、彼のファイトは韓国そのものをあらわしてるの
ではないか? そんな気がするのであった。
いろんな情報を聞いても、チャンの名チャンピオンらしからぬ
気さくな人柄が伝わってくる。いつかチャンに会って、
「わたしはあなたの大ファンです。」と言ってみたい、
そんな夢を持っている。
