むかし公務員をしていたとき、近くによく行く食堂があった。
コンクリート敷きの土間の上に質素なスチール製のテーブルといす、
おそらく数十年変わっていない空間だろう。そこはまさに昭和中期
にタイムスリップしたような場所だった。
そんなだから客はそんなに多くはなく、おばちゃんがひとりで切り盛
りしていた。
メニューは失礼な言い方をさせてもらうと"老人食"に近いものが多
く、味も取り立てて美味しいわけでもなかった。
たいてい客はわたし独りかどっかのおじさんがいるくらいで、大学の
すぐそばにもかかわらず学生が来ることもほとんどなかった気がす
る。
だがわたしはその雰囲気が気に入っていた。というか、この店をつ
ぶしてはいけない、できるだけ客として来てあげなければいけない
という使命感になぜかかられていた。
その理由はいまだによくわからない。

コメントする