世間の目が亀田親子に注がれるなか、もうひとつの
“親子鷹”が静かにリングを去っていった。
越本隆志・35歳
前WBC世界フェザー級チャンピオン
現Fukuokaジム会長
越本英武・63歳
前Fukuokaジム会長
越本隆志は右肩腱盤断裂という“爆弾”を抱えていた。
右ではストレート系のパンチしか出せない状態であった。
本来なら引退しても当然の怪我である。
しかし越本はあきらめなかった。いや、あきらめきれなかった。
2006年1月29日、越本はWBC世界フェザー級
チャンピオン・池仁珍(チ・インジン)に挑戦、判定で
王座についた。
財力のない地方ジムの世界戦。越本にはファイトマネー
が一銭も払われなかった。それでも父・英武会長の
精一杯の尽力によってなんとかこぎつけた興行だった。
また、35歳でのタイトル奪取は日本最年長記録だった。
2006年7月30日、越本の初防衛戦。挑戦者は22歳の
ルディ・ロペス。
序盤から若い挑戦者が優位に立つ。
そしてむかえた7ラウンド、連打を浴びた越本はレフリー
に抱きとめられた。
試合後、越本は引退を表明した。
父・英武は息子にジムを譲る決意をした。
越本隆志―――、決して大きな注目を集めるチャンピオン
ではなかったが、その生きざまは多くのボクシングファンの
こころに刻まれるだろう。