息詰まる投手戦。8回表を終わって両チームとも1点も
入っていない。試合の流れからして1点を取られたほうが
負けという最も息苦しい展開。そんなときにこの場面は
起こった。上宮の8回裏の攻撃は1アウト後に四球ででた
ランナーをおいて二塁打が飛び出し、二・三塁の場面で
あった。
マウンドに伝令が走り、東亜学園の内野陣が集まる。
野球を知っている者なら誰しもここは敬遠とおもったであろう。
なぜなら次の打席は元木大介だからである。元木は大会前
からナンバーワン・スラッガーとして注目されており、前の
試合・丸子実戦でも2本のホームランを放っている。いや、
元木でなくてもこの場面は敬遠でも何ら不思議ではない
ところであろう。
しかし、東亜学園バッテリーはそんなそぶりは見せない。
1球目は外角に外れてボール、2球目のストレートを元木は
バットの芯に捕らえた。打球はレフトのポールめがけて飛んで
ゆく。元木はバンザイしている。しかし、わずかにファール。
東亜学園は命拾いした。
ここで作戦を変更することはできたであろう。しかし、再び伝令が
走ることはなくバッテリーは大ファールに臆することなくこの怪童に
立ち向かっていった。そして元木をライトライナーに討ち取るの
である。
結果的にはこの後タイムリーを打たれ、それが決勝点になるの
だが、試合後の東亜学園ナインは実に晴れやかであった。
エース高平投手は言った「絶対に逃げたくありませんでした。
もし敬遠してたら後悔したでしょうね。」。おそらくナインも同じ気持ち
であったであろう。そして、それから16年の月日がたつが、おそらく
彼らは元木と勝負したことを今も誇りに思っているであろう。
上宮-東亜学園(平成元年夏・二回戦)
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